57億の孤独

久しぶりにマンガを語ります。



ギャンブルマンガの巨匠、福本伸行先生の代表作の一つ『カイジ』の鉄骨渡り編に、すごく沁みるシーンがあります。



主人公のカイジ達は、高さ74メートルの鉄骨を渡りきれば2000万円を得られるというギャンブルに挑戦します。落ちれば当然即死。


足の幅ほどしかない鉄骨、落ちたら死亡確定の恐怖心、吹き荒れる強風。挑戦者達は次々に墜落していき、残るはカイジと、カイジの隣の鉄骨を渡る佐原の二人だけ。


その時カイジは、唐突に思うのです。
この鉄骨を渡ることこそ人生だ、と。



お互いのキョリは絶望的に離れていて、決して触れることはできない。いつだって心は孤立していて、伝わらない、理解もできない。


世界に57億人の人々がいるなら、57億の孤独がある。



ふと周りを見回せば、手は届かないが自分と同じように細い橋をノロノロと歩く人達が放つ光が無数に見える。そしてその光は唐突に消えたりする。
この橋は死へと向かう一本道。


57億の孤独(あかり)


お互いは決して触れ合うことができないが、それでも伝達、通信することはできる。
通信は通じたと信じること、伝達は伝えたら達するだけのことで、どこまで相手が理解してくれたかは分からない。
それでも人々は通信する。伝達する。
孤独だからこそ、人の存在そのものが希望であり、温もりである、と。



今回の関西ツアー3日間のうち、2日はネカフェに泊まったのですが、久しぶりにこのシーンを読んで、思わずグスッと来てしまいました。感動でしばらく寝付けなかったです。
福本先生、なんてステキな人なんだろう。



福本マンガの主人公は基本的に無敵の超人なんですよ。アカギも銀さんも涯も零も。
ただカイジはこの傾向とはちょっと違って、勝負強いけど、基本的にクズ人間で、最後のツメがちょっとだけ甘かったりする。だからこそすごく共感できて、俺はカイジが大好きなわけです。


 


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