持たざる者の一撃
カイジの中に登場する命がけバトルのひとつに『Eカード』があります。
詳細はウィキペディアなどに譲りますが、簡単に言うとこのゲームは二人のプレイヤーが交互に皇帝側と奴隷側を受け持ちながら、身体の一部やお金を賭けて争う心理ゲームです。
名前のイメージ通り、皇帝側が圧倒的に有利なのですが、不利な奴隷側で勝利すると、皇帝のときよりずっと多くの利益を得ることができます。
劇中では、奴隷側だったカイジが命がけの2連勝を決め、劣勢をひっくり返して圧倒的な勝利を手に入れるのですが、それに関連して印象的な表現がいくつかあります。
「奴隷は二度刺す」
「劣性の意地」
みたいな感じだったかな。
持たざる者の後がない覚悟を感じられて、とても共感できます。
最初にことわっておきますが、僕はまちがいなく恵まれている部類です。持たざるなんて表現を使うべきではないのかもしれない。
でも、満ち足りない思いを推進力に変換できるのは自分の特技だと思っています。
音楽でも、編集や執筆でも、自分はずっとアウトサイダー側の人間と認識しています。
音楽でいえば、一度も音楽資本に相手にされたことはないです。
一時的にでも、業界側に期待されて投資をしてもらったことがない。
結果的に売れなくても、一度はメジャーデビューしたことがある人はけっこうたくさんいるんですよ。
歴史っぽく表現をするなら、中央政府から官職を授かることがない在野の士です。
だからこそ誰にも頼らず、自分たちですべてやっていくしかないという意志があるし、実際にそうやって音楽を続けてきたという自負があります。
まあ、これは本気でインディーズバンドを始めた時期が、普通の人よりもずっと遅かった影響もあるでしょう。
本作りでもそうです。
僕はリクルートが嫌いなんですが、別に恨みがあるわけではなく、むしろやっている仕事の質は高いし、働いている有能な人をたくさん知っています。
ただ、そういう華やかな第一線からはるか遠いところにいるという、屈折した感情があるんだと思います。
大手出版社とははるか遠い地平の先で、地べたを這いずり回りながら日本語と闘い続けてここまで来ました。
まあこれも、ろくに就職活動をせず、適当に選んだスーパーブラックの編集部に最初入ったことが影響しているでしょう。
やっぱりここでも出遅れているわけです。
なんにせよ、カイジではないですが、皇帝側に痛烈な一撃を加えるのが僕の人生の目標です。
だからこそナミダロジックやオリンポス16闘神で、メジャーにはできない活動を追求しているつもりです。
また雑草なりに培ってきた技術や意識を総動員して、自分と自分の仲間にしかできない本作り、メディア構築をしようと日々爆弾を作っています。
レインボーでいうところの『KILL THE KING』。
痛恨の一撃を加えたいという意欲があるうちは、なんだってできると思う。
普通の幸せなどいらぬ。
奴らを帝位から引きずりおろすのは、守るものがないからこその身軽な一撃だと思っています。